哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

アンセルムスについて その5

 本日で最後となるアンセルムスは「神」を「最高の存在」と位置づけ、これを肯定するには神は心の外、即ち自らの内にも実在しなければならない、と考えたのです。そして、実在を否定する場合は、更に大きなものが他に認められるとも考えたのです、こうなると先に書いた「それより大きなものがないもの」に反するため、神は人間の理解のうちだけではなく、実在するとアンセルムスは説いたのです。更に、最高の存在が最高であるためには、神は一人であるとも主張したのです。つまり、アンセルムスは聖書の中に登場する「神」が「なぜ一人なのか」という理由を理性によって明確にしたのです。
 このように聖書の権威に頼ることなく、理性のみによって神の存在を証明しようとした彼の論証は、後のドイツの思想家であるイマヌエル・カントによって「神の存在証明」と称され、後に続く多くの神学者や哲学者によってありとあらゆる側面から検証されたのです。この「神の存在証明」は、主に神学者達からは批判されましたが、デカルト、ライプニッツ、ヘーゲル等の哲学者達は、それぞれの立場からこの論証の正当性を主張したのです。

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