哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

ヴォルテール/フランソワ=マリー・アルエについて その6

 本日で最後となるヴォルテールですが、彼はある事件から著書を発表して、当時のキリスト教の批判した事もあるそうです。それが「寛容論」です、この著書が発表されるきっかけとなったのは、プロテスタントのジャン・カラスという男性が、自身の長男がカトリックに改宗しようとしたから手にかけた、という罪で裁判にかけられたのです。ジャン・カラス氏の家族は不当な手段で罪を無理やりに認めさせられるも、彼だけは罪を認めず、無罪を叫び続けました。この事件に「自分は人間であるからである」という理由から関心を持ったヴォルテールは、カラス一家の弁護に立ち上がり、家族の声を聴いて、積極的に活動しました。そして、1763年にカラス一家に行われたことは、本来のキリスト教の教えではない事を聖書や歴史から論証した「寛容論」を発表したのです。
 カラス一家だけでなく、他にも似た様な事件が起こっている事を知り、ヒューマニズムを重んじていたヴォルテールは神の存在を功利的意義において認めながらも、宗教的な狂信や偏見、教会の横暴に対して批判し、「寛容の精神」を説いたのです。また、山上の垂訓を熱心に語るイエスを賞賛しながら、その後に自身の名で罪が行われることに涙を流すイエスを描き、迷信と宗教は異なるものである、と強く否定したそうです。

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