哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

シャルル・ド・モンテスキューについて その3

 さて、出版された当時は匿名で、しかも支持されながらもカトリック教会からは禁書目録に載せられた「法の精神」ですが、これはモンテスキューが影響を受けたイギリスの哲学者ジョン・ロックの権力分立を更に発展させた三権分立を説いています。ロックが説いたのは自然法を援用して社会の起源を説明した「立法」、「行政」、「連合(同盟)」の三権に分けた立法権優位のものであるのに対し、モンテスキューは「立法」、「行政」、「司法」の三権に分けて、それぞれを独立した組織にすることで権力の抑制と均衡を説いたのです。この背景には、モンテスキュー自身が人間の本性を権力を濫用するものである、と定義した事があります。
 つまり、権力を拡散させるという定義の上、権力を分割しない統治形態から生まれる法は政治的自由が保障されないと考え、絶対王政を懐疑的にとらえた事に由来しているのです。もっと簡単に書くと、1つの組織が絶対的権力を持つ様な場所で生まれた法律では、個人に政治的な自由が全く許されない、これはおかしい事だ、とモンテスキューは主張したのです。今でこそ当たり前の考え方ですが、これは当時のフランスでは非常に新しい考え方だったのです。

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