哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

トマス・アクィナスについて その5

 ある日のミサで神秘的な体験をしたという理由で執筆活動の一切を辞めてしまったアクィナスですが、その哲学は現在まで伝えられています。彼の業績において最大とされるのは、キリスト教の思想とアリストテレスの哲学を両立させた事です。彼が生きていた当時は、十字軍遠征をきっかけにイスラム圏との交流が始まり、東ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌスが異教活動を禁止した為に一度は途絶えた筈のギリシア哲学の伝統がアラブ世界から西欧に物凄い勢いで流れ、何度も禁止令が出たにも拘わらず、止めることは出来なかったのです。さらにイスラム圏は医学や薬学、物理学や数学等に秀でており、その進歩の要因の一つにアリストテレスの哲学が関わっている事が分かったのです。
 それと同時に、商業が発展していき、都市は繁栄していき、どの信徒であるにも関わらず、人々が堕落していく風潮と、反感がありました。この時代背景の中で、アクィナスは神学を教える身として「哲学者アリストテレスの註釈家」と呼ばれていた者達や、他の思想家とも論理的に対決する必要があったのです。

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