14 01 2016
ピュロンについて その3
さて、疑う事を哲学の主軸としてピュロンですが、前回では彼の主張が以前に紹介したエピクロスの「アタラクシア」、「心の平穏」に繋がる事を紹介しました。また、前回の記事で書いたセクストスは著書「ピュロン主義哲学の概要」の中で、ピュロンの思想を「教義的哲学」、「アカデメイア的哲学」、そして「懐疑哲学」の三つに分類し、これを「ピュロン主義」と唱えました。更に、その中で真偽善悪のすべての判断には誤りの可能性があり、心の平穏を乱す動揺の源はここにあると考えたそうです。正に疑う事を前提にした哲学らしい考えです、それを踏まえて、人の判断は全て独断に過ぎず、すべての判断に対して決断を差し控える「判断の保留・中止」を意味する「エポケー」という思想を説いたのです。
この思想はエピクロスが世俗から離れた事から勢いを増したストア派の目指す境地に、判断の停止という方法で辿り着こうという意味で、知る努力を放棄する事ではなく、独断による迷走を否定した忠告なのです。