12 11 2015
エピクロスについて その17
前回の記事では、エピクロスが唱えた「命の終わり」に関する「恐怖」を紹介しましたが、その原因を彼は「ヘロドトス宛の手紙」で、この様に書いたそうです。
「人間の魂にとってもっとも決定的な動揺は、人びとが神話の影響で、死後にいつまでもつづく何か恐ろしいことを絶えず予期したり、危惧したりすることによって生ずる」
「神話」とは罪を犯した人が罰を受ける様子が出てくるギリシア神話、日本では「三途の川」や「地獄」や「極楽」など、今も語り継がれている「あの世」を意味しています。プラトンの著書「パイドン」では、ソクラテスも刑罰によって命を落とす決まった時は、弟子たちの前で自分は神話に出てくる「死後の世界」で過ごすという内容を語ったと記されており、それを熱心に聞いた弟子たちの様子から「あの世」が信じられていた事が伺えます。しかし、エピクロスは「命の終わり」は自分も終わると主張し、そんな世界に対する恐怖から解放されるのが「心の平穏」であると、神話を全て否定したのです。