6 11 2015
エピクロスについて その16
前回の記事では、エピクロスの唱える「命の終わり」に関する主張を紹介しました。そして、その恐怖を払拭しようとしたエピクロスの更なる努力を感じる言葉があります。それは岩波書店から出版された「エピクロス 教説と手紙」の「ヘロドトス宛の手紙」に、この様な内容の言葉が書かれています。
「人間の魂にとっての最大の動揺は、命が終わり感覚が失われること自体をあたかも、われわれ人間にかかわることでもあるかのように思って恐怖したりなどして、命が終えた後に果てしなくつづく恐ろしいことを、たえず予期し懸念するところによって生まれるのである」
この様に命が終わった後も限界も考えないで妄想すれば、誰だって怖いと思うでしょう。ですが、前回の記事で書いた様に命が終われば、本人は存在しない。自分も、他の人の「命の終わり」も自分には関係ない。確かに、そう考えられれば恐怖から解放されるでしょうが、同じ手紙でエピクロスは、現代にも存在する「恐怖の原因」を指摘していたのです。