哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルについて その5

 前回の記事でヘーゲルが夢中になった人物としてナポレオンの名前を出しましたが、二人が直に交流した事はありません。むしろ、彼が務めていたイェーナ大学は国がナポレオン率いるフランス軍との戦いに敗れて征服されて、閉鎖になります。ですが、その戦勝パレードで直にナポレオンを見たヘーゲルは、その様子を「世界精神が馬に乗っている」と表現したそうです。そんな彼が言った「世界精神」とは世界が一定の方向に行く様に意図された精神、もしくは計画の存在です。
 つまり一人、一人の精神が集まって「未来」が決まるのではなく、すでに用意された「計画」という「世界精神」に向かって努力するのが一人、一人の精神であるという考えです。これだと馴染みがないでしょうが、世界的な企業が一定の期間毎に打ち出す世界的な戦略を立てる事とも言えます。ちなみにナポレオンに征服されたのは1806年頃の出来事で、この時に彼の主著である「精神現象学」の原稿が完成しておらず、フランス軍が焚いた火を灯りに読んでいたという逸話もあるそうです。

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