哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

トマス・ホッブズについて その3

 さて、人間に対する見解で国を追われたホッブズですが、彼に関して面白い逸話が残っています。それが「歌」です。実はホッブズは心配性な一面があり、書籍が売れる前は上流階級の手伝いの一環として金銭を借りる為に多くの家を回っていて、その際は「自分は風邪で亡くなるのでは」と思っていました。書籍が売れてからは「家が強盗に襲われるかもしれない」と友人に零した事があるらしく、自身の健康にも気を使っていたそうです。そんな彼が実践していた健康法が先に書いた「歌」です。
 彼は人々が寝静まった夜中に歌っていたのです。今なら「ストレス解消」として「歌」も健康法の一つに数えられますが、当時のホッブズは歌えば「寿命が三年ほど延びる」と信じていたのです。ただ、本人は戸締りもしっかりしていたつもりですが、実際は声が漏れていたそうです。そんな彼の歌声に関する評価は「あまり上手くない」とされています。人間の欲望を指摘した哲学者としては想像しにくい一面でもあります。

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