哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

アダム・スミスについて その4

 本日で最後となるアダム・スミスは、利己心を社会全体の繁栄のために不可欠な要素であると説き、私利私欲の追求は公益につながり、国家は経済活動への干渉を最小限に抑える“小さな政府”、“安価な政府”とする「夜警国家論」を主張しました。これは、国家は、その任務を国防・警察・消防・司法などに限定するという考え方で、国家・政府が市場に干渉せず放任することが国民に利益をもたらすと信じる思想的立場で、市場原理主義とも呼ばれています。
 また、スミスの「見えざる手」または「神の見えざる手」とは、キリスト教の終末思想に登場する「神の見えざる手により救済され天国へ行くことができる」という教えからきたらしく、これを経済の考え方として比喩したものだと考えられています。因みに、スミスの著作「国富論」は経済学の面だけでなく、社会思想の歴史においても古典と位置づけられており、現在の経済学とは異なる思想であるものの、古典経済学を学びたい人にとっては他の書籍に比べて分かりやすい内容になっています。また、スミスの説いた「市場原理主義」に関しては、18世紀に限った話ではなく、近代でも1970年代ごろに市場原理主義に基づいた経済政策が行われたことがあります。ただ、こちらは近代に合わせた新しい思想という事もあり、「新自由主義」とも呼ばれています。

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