哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

アダム・スミスについて その3

 当時の時代背景とブログでも紹介した哲学者ヒュームとの親交、また道徳哲学に関しても自然法思想やスコットランド啓蒙の中心人物であった哲学者から教えを受け、スミスは自身の思想に大きな影響を受けました。そんなスミスが唱えた思想が「古典派経済学」です、その代表的な言葉に「見えざる手」または「神の見えざる手」があります、これは1776年頃に刊行された「国富論(諸国民の富)」について述べられた言葉で、各人が利己心、自分の利害だけを考え、他人の事を考えない行動に従って利益を追求する自由な経済競争に任せておけば、経済は「見えざる手」に例えられる需要と供給の市場原理が調整され、社会全体の利益を生む、という考え方です。
 一見すると勝手な物言いでしょうが、この思想はイギリスの古典派経済学における自由主義経済の基本的な理論で、スミス自身はこれをフランス語で「自由に任せる」という意味の「レッセ=フェール(自由放任主義)」と唱えました。実際に、国の発展には、生活基準を上げようという意欲が必要になるときもあるので、そうした考えがない時代には斬新な主張だった事でしょう。

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