哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

ジャン=ジャック・ルソーについて その11

 本日で最後となるルソーの著作「社会契約」は、人民、つまり民衆にも意思があり、自分達で法を定めて従う権利がある、という民主主義の基本理念を説いた、という事は少し前の記事で紹介しました。このルソーの思想には、人民は共同体の構成員であると同時に、自分自身の主人となり、市民的自由を回復することを目的にしていた、とされています。つまり、それまで王族など限られた人々で行われていた政治に国民が直接参加して、最終的な意思決定を行う事を唱えたのです。
 個人の意思が一般意思に一致する時、個人は共同体によって権利を保障されて道徳的、社会的に自由を獲得することが出来る。この一般意思は、代表者を選挙する間接民主制とは対をなしており、全人民が集会に参加して直接に意思を表明する直接民主主義を唱える事にも繋がっているのです。この「社会契約説」は、その後の世界史に残る市民革命「フランス革命」、そして、人間の自由と平等、人民主義、言論の自由、三権分立など17条からなるフランス革命の基本原則を記した「フランス人権宣言」にも通じており、自由・平等の理念に基づく近代市民社会を形成する礎になったのです。

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