哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

ジャン=ジャック・ルソーについて その10

 ルソーの代表的な著作の1つ「社会契約説」で説かれた内容は、階級が決まっていた当時の人々にとっては大きな衝撃を与えました、そもそもルソーは注目を浴びた「学問芸術論」の後に「人間不平等起源」という人は進歩する過程において「富」という競い合い、不正と争いを引き起こす原因を作ったと既に説いていたのです。本来は自然から与えられる環境的条件の中で、自足的に生きて、争いのない状態があったのに、それが文明化によって財産が生まれ、それを管理する国家が生まれて、不平等が制度化される様になった、と説いたのです。この不平等が続けば、人間にとっての自然は破壊され、道徳的な退廃がやってくる、という倫理的メッセージを含んだ内容は人々の心に恐怖感を煽るほどの衝撃を与えたそうです。後に、この書は進歩に対する批判的な著書としては「世紀の奇書」と評されたそうです。
 ルソーは素行や性格面だけを取り上げると、変わった面が目立つ人物ですが、進歩の危険性や、民衆に無理ばかり強いる支配的な政治に対する疑問と新しい解釈を提示して、後世にも名を残す「偉大な哲学者」となったのです。

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