哲学カフェ

哲学書を一つづつ取り上げて、それを時に独善的とも思われる解釈を試みながら、一見難しいものと思われる哲学書の解読を行うものです。

ヴォルテール/フランソワ=マリー・アルエについて その4

 生前から優れた知性と多大な影響力から「ヴォルテールの時代」と称される程の人物だった彼が、哲学者のルソーと出会ったのはヴォルテールが宮廷で余興劇を音楽家と共同で書き、その仕上げた加筆を任せたのだ最初です。その後、ルソーはヴォルテールに手紙を書き、ヴォルテールも最初は好意的な返事を書いていたそうです。特にルソーが著作「人間不平等起源論」を発表した際は、大いに賞賛する内容の手紙を送り、ルソーも深く感謝する返信をしたそうです。ですが、その数か月後の1755年以降、キリスト教の信仰に関する問題が起き、無神論に近い理神論を説いていたヴォルテールは以前より行っていたキリスト教への批判を始めたのです。その一方で、ルソーは牧師から神の摂理を弁護する依頼を受け、ヴォルテールの主張を批判する書簡を送ったのです。
 ここで論争が起これば変わっていたかもしれませんが、ヴォルテールは反論するどころかルソーの文学的センスを褒めたのです。議論するつもりはない、というヴォルテールの態度にルソーは激怒し、この様な事が積み重なり、互いに意識はしているものの関係は悪化する結果となったのです。ただ、この関係が互いに多くの著作を発表する原動力になったともいえるでしょう。

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