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2.心とは何か?

喧嘩をしたと友達と仲直りするには、プレゼントをあげるような「モノ」のやり取りだけではうまく仲直りできず、むしろ、「私の気持ちを踏みにじっておきながらモノで解決しようとするなんて」というように、反って、怒りを買いかねません。
この場合、「心」がモノである事に納得出来ず、モノと引き換えが出来ず、モノの及ばないところに「心」の存在があります。
私は相手の「心」の傷を癒したいためにプレゼントを贈ったのに、相手は自分にはそんなプレゼントなんかでは癒されない「心」があると考えているのです。

このような実感のもとで、人の行動を左右するほどの重要な働きをする「心」が、実は脳などの身体組織の機能の一部だと言われても、少なくとも哲学的思考になじみがない人には俄かに信じがたい筈です。
ところが、「心とは何か」「心が行動に対して因果的に作用することはあるか」といった哲学的疑問について考えてゆくと、行き着く先は、どうしても心の独自の存在を否定するような見解になってしまう、という問題をこれから考えて行きます。

このような困難をもたらすのは、世の中に存在するあらゆるものは物質的な存在に過ぎないとする「物理主義」です。
「物理"主義"」とかなり大仰な印象かもしれませんが、その考え方自体は私たちにとってそれ程縁遠いものではありません。