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9.因果関係の試み

しかし、以上の説明に対しては「学校に行きたくないと思わなかったならそのような身体組織の異常は生じなかったのですから、その感情が腹痛に関与していないとは言えないのではないのか」と反論出来る筈です。
しかし、その反論は、それ程の効果はありません。
何故かといということを理解するのに、登校を嫌がる気持ちと身体組織の異常についてではなく、それらの気持ちと腹痛と「もしAでなかったならBでなかった」という形の文(反事実的条件文)に当て嵌めて比較してみます。

因果関係が成り立つかどうかをテストするにはさまざまな方法がありますが、その代表的なものに、Aを原因の候補とし、Bを結果として「もしAでなかったならBでなかっただろう」という形の反事実的条件文を作り、この分が正しいかどうかを確かめるという方法があります。
もしこの反事実的条件文が正しければ、そのことはAとBの間には因果関係が成り立っている事を示す有力な手がかりになります。
この文は、Bが起こるかどうかは、Aが起こるかどうかにかかっているに等しいからです。

①もし登校を嫌がる気持ちが生じなかったなら腹痛は起こらなかっただろう。
②もし身体組織の異常が生じなかったならば腹痛は怒らせなかっただろう。

①と②のどちらがもっともらしいと言えるでしょうか。
それを考えるために、「登校を嫌がる気持ちが生じたとき」と「身体組織の異常が生じたとき」のどちらにおいてより腹痛が起きやすいかを比べてみましょう。