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14.心的因果をめぐる問題

心的因果の正否をめぐる問題を解決するために注目したいのは、私たちの行動や心の状態が、何を原因にしてどのように生じるかの「説明」です。
私たちは、例えば信念や欲求によって自分の行動や気持ちを説明します。
そのような説明の仕方はなんら特別なものではなく、私たちはごく自然にそれを行い、他の人の説明も何の抵抗もなく受け入れる事ができます。

しかし、そのような行動や心の状態の実際の「原因」は、脳や神経における物質的な事柄に求めているのが現状です。
もし心的状態による行動の説明を「因果的説明」、つまり原因による結果の説明と考えるなら、本当の因果過程は脳や神経と身体との間に生じているのに、わざわざ因果的な力を持ちそうもない(心を非物質的と考えるならばどうしてもそうなってしまいます)ものによって説明を与えるという、はなはだ奇妙な事を私たちは行っている事になります。

太田雅子著『心のありか』は、このような心に対する態度の矛盾を解消する事で、「心がなぜ、どのようにして行動(など)を引き起こすのか?」、そして「心は私たちの世界においてそれ特有の因果的な役割を果たす事ができるのか?」といった、心的因果をめぐる問題を考えて行きます。