心の行方~哲学的、心理学的、科学的に心とは何か~ TOP > 12.哲学者・ジェグォン・キムの疑問

12.哲学者・ジェグォン・キムの疑問

哲学者の様々な試みにも拘らず、どの立場のいづれもが納得がゆく決定的な得られなかったばかりか、ジェグォン・キムという哲学者は、心的因果が成り立つかどうかにとって致命的な問題点を指摘しました。
心的因果の存在を擁護しようとする動きは、現在のところ、行き詰まった状態にあります。

何故心が何かを引き起こしうるのかを説明するときに、心的因果の存在を支持し、そして物理主義的傾向の多くの哲学者がとった見解とは、以下の通りです。

ちょっと回りくどいのですが、引用します。

ある結果を引き起こしたものが心に特有の性質を持っているとき、その性質は当の原因が持っている物理的性質の「上に乗る」ことによって因果的な影響を発揮していると考えるのである(この「上に乗る」という状態は正確には「スーパーヴィーニエンス」と呼ばれる)。

スーパーヴィーニエンスを取り入れる事で、因果関係が物理的なもの同士に成り立つとしても、その事によって必ずしも心的因果性を否定しなくともよい。
つまり、物理主義を支持しながら、心の因果的な力を持つ事を主張できるという曲芸みたいな論法が支持されているのです。
これが従来の標準的な捉え方です。

しかし、キムは、以上のような見解に対して、例えそのような形で心の因果性が説明できたところで、「それ賀に難になるのか?」と疑問を呈したのです。