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5.因果性の物理的閉包性

物質的なもの同士の因果的な関わりは、それがどういうものか具体的に解からなくても、基本的に科学の知識を使えば、大まかには理解できます。
椅子を手で押せば動くのは、一定の力を物体に加えれば動くという考え方で納得できますし、パソコンのキーを押せばそこに書かれてある文字がディスプレイに表示されるのも、パソコン内部の構造がそうなっているという事から納得できますし、また、専門的にその構造を説明してもらう事も出来ます。

しかし、物質的でないものがどうして物質を動かす事が出来るというのか。
たとえば、念力や呪いによってモノを動かしたり人を苦しめたりしたりするのを目の当たりにしたとき、私たちは、何かしら奇妙で不可解な、「そんなことある筈がない」という感覚に襲われる筈です。

つまり、私たちは、物質的でないものが何かを引き起こす事はあり得ないと思っているのです。
この事は心の哲学で次のように呼ばれていて、このレポートのキーとなるものです。

【因果性の物理的閉包性】
物理的なものにはそれが起きる十分な物理的原因があり、その原因をどこまで辿って行っても物理的なものの外に連れ出されることはない。

以降はこれを〈閉包性〉と呼ぶことにします。