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8.心的因果に対する見解

第一段階で、心的因果は「脳科学理論や身体の動きに関する生理学的・化学的理論と日常心理学との相互関連性」によって成り立つのだという見解を打ち出します。
このような図式を打ち立てる事で、因果関係を話題にする際、私たちがぶつかる物質的なものの優位性から離れて、心が因果性を持つ道が開ける筈です、というのが著者の意図するところです。

第二段階はより重要で、ことによると物議を醸し出すと著者は述べます。
そこでは、「因果関係」そのものを理論上の関係として捉えます。
これは、因果関係をモノ同士、存在物同士の関係とは捉えない事でもあり、心それ自体としての因果性を半ば諦める事です。

少し考えただけでも「そのような形の見えない関係を因果性と認めることができるのか」「心身問題においては、すでに脳と身体の間の『モノ同士の』因果関係が成り立っているが、『理論上の』因果関係はそれと衝突するのではないか」という反論が予想されますが、これらの規範論に対しては著者は一つづつ答えて行く予定です。

これらの批判者の因果関係及び因果性に対する態度について共通するのは、「因果関係は何か形があるものの間に成り立っている関係である」という考え方です。
常識的には、私たちは漠然と因果性に対してそのようなイメージを持っていますが、それは自明な事なのだろうか、と著者は疑問を投げかけます。
むしろ、「心による行動の説明を私たちは因果的と看做している」と同じくらいに、謎が多いのではないだろうか、と。