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4.日常での心の扱い

心を原因として説明してきたことは全て幻だったのでしょうか。
この疑問に答えるために、今までと違った視点で、考察するのも一つの手です。

この事は「此方が駄目だったからあちらで同だ」ということでは決してありません。
こころが、世界における存在物の一つとしてどのようにして行動と関わるのかを探求するのと同じくらいに、普段私たちが、心に言及する形で行動や感情などの説明を行っているのはどうしてなのかを探り当てる事もまた哲学の使命です。
「ただ、生まれたときからそういう表現を使うように教え込まれたから」「他の人がそういう説明をしていて、自分も同じように説明しないとコミュニケーションに支障をきたすから」という、言葉遣いの上だけの事で、私たちは、心による説明を用いているのでしょうか。
もしも、それ以外に、私たちの説明を成り立たせている何かが、心の在り方に大きく関わっているとしたならばどうでしょうか。
その正体を明るみに出す事は、心的因果の問題を探求する方法の一つにとどまらない、重要な試みなのです。

説明に焦点を定めた心的因果の考察の手始めとして、第四章では「行為の因果説」と「反因果説」との対立に目を向けます。
この対立の争点は、行為の理由が、行為の原因でもあるのかどうかにあります。