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7.日常心理学および素朴心理学の格上げの意図

確かに、物事の間に因果関係があるかどうかを判断する目安として反事実的条件文は有効ですが、それが成り立っている事が全てではないと、著者は言います。
寧ろ、因果関係の特徴づけとしては不十分です。
だから、もし日常における心的説明の役割を重視する立場をとるならば、反事実的条件文によらない因果性の見方を示す必要があるとも著者は言います。
そして、著者は、「因果関係」の見かたそのものを変えるという大胆な提案をしています。
つまり、何らかの存在者ではなく、それらの存在者を記述する「理論」とそれをもとにしてなされる「説明」の中に心の因果性のありかを求める事により、物質的でないものでも、因果的説明として適切であれば、因果関係を形成しうるという立場を提案しています。
第六章ではその具体的な方策が示されています。

第六章で展開されるのは、2つの段階があります。
私たちが心に関して抱いている極めて常識的な考え方――そこには、心が行動に対しての役割を果たし得るという考え方も含まれています――の全ては「日常心理学」および「素朴心理学」などの名で呼ばれるものです。

まず、それらを私たちの常識、および、民間の智慧と言ったレベルのものから文字通りの心理学的「理論」へと格上げします。
ここまでが第一段階です。