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9.説明からの心的因果の擁護

因果性をめぐる常識が実は誤りかもしれないと示唆したのは、デイヴィッド・ヒュームという哲学者です。
ヒュームは、ある種類の事が生じた後に別の種類の事が生じるということが何度も観察された時、前に起きた種類の出来事を「原因」、後の方を「結果」と呼ぶに過ぎないとし、「因果関係」と呼ばれるような物事の結び付きの存在を否定しました。
問題なのは、ヒュームの立場と常識的な――物事の結び付きとしての――因果観のどちらが正しいかというのではなく、どちらが正しいのかどうやって見極めればいいのか解からないということです。

逆に言えば、どちらが正しいのか解からない以上、どちらを使うかは私たちの選択に任されているということです。
このレポートでは、存在者同士の関係から切り離され、説明においてのみ宿る「因果性」としての「心的因果」を組み立て直すと言っている『心のありか』の著者、太田雅子氏にくっついて、離れず、現在の哲学において、心とは何なのかを見渡す事です。

とはいえ、太田氏によれば、『心のありか』が目指す「説明からの心的因果の擁護」という試みが困難この上ないことは一目瞭然であるといい、初めから敗北覚悟で『心のありか』を書き進めているとのことです。