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6.心的因果の立証

ところが、第四章でのべるようにデイヴィッドソンの立場は危ういバランスの上に成り立っていて、反因果説からはその危うさを追求されることになるのです。
四章では行為の因果説が圧倒的に優位であるわけではないにしろ、反因果説による反論もまた必ずしも理由が持ち因果的な含みを排除するものではないことが明らかにして、「説明からの心的因果の立証」へと希望をつなげる事を目指しています。

第五章からは、いよいよ心的なものによる行動の説明を心的因果の立証へと結びつける作業を本格的に行っています。
このアプローチには何人かの先駆者がいて、日常的な行動説明の重要性素を掲げて心的因果の問題を考える際、存在者同士の関係に関する「形而上学」よりも、私たちが行う説明を重視すべきだと主張したタイラー・バージやラダー・ベーカーなどがそうです。

しかし、彼らの立場も、また、キムによって痛烈に批判されます。
ここでは主にベーカーの主張を紹介した後、キムからの批判をかわす方法を示して、さらに、ベーカーらの立場のどこがまずかったのかを、どうすれば彼女らの望んだように説明実践重視の立場を打ち立てる事ができるのかを探っています。

著者の考えでは、説明実践を重視するベーカーらの立場の問題点は、彼らの因果性の見方、具体的には、腹痛の例を用いて紹介した反事実的条件文に基づく味方にある、ということです。