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1.非法則的一元論

ドナルド・デイヴィッドソンという哲学者は、今日にいたるまで心の哲学に多大な影響を及ぼす二つの立場を提唱しました。
一つは、心身問題における「非法則的一元論」であり、もう一つは、「行為の因果論」です。
この他にもデイヴィッドソンはさまざまな主張を行っており、それらが一つの体系をなしているのが彼の思想の特徴です。
このうち第一章では前者を取り上げます。

「非法則的一元論」とは、今の段階で簡単にまとめるならば、全てはモノが動かしているという世界観を守りながら、そのような世界に心を位置づける試みです。
彼以降にもこのような志向を持つ様々な哲学者が現われましたが、肯定するにせよ批判するにせよ、何らかの形でデイヴィッドソンの立場を念頭におかずに展開される主張は殆どないと言ってよいです。
第一章で非法則一元論を扱いますが、それに代わり得る立場を模索するというよりも、心の哲学における物理主義の限界を浮き彫りにする事を目的にします。

デイヴィッドソンの立場には多くの反論が寄せられ、今もなお活発な議論が続いていますが、デイヴィッドソンばかりではなく、物理主義を守りながら心の働きを証明しようとする者全員への決定的かつ深刻な打撃となったのが、キムの一連の論証です。