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第二章 物理主義を乗り越える 一 キムに抗して

キムの提示してきた因果的な力をもたないという条件付きで心的性質を許容するエピフェノメナリズムと、そのような還元不可能な性質の存在自体を否定するかの消去主義の、二つの選択肢は、いづれも私たちが普段考えている心というものに関しての考えからは到底受け容れられないのは当然です。
そこで、このレポートで目指しているのは、あくまで因果的と呼んでもよいような力を持った心の存在を確実に立証することであり、例えば、心を物理的なものに還元してしまうのはもっての外で、だからといって、行動に対して全く無力な存在としての心を認めたところで何にも得るところはありませんし、それは無意味な事でしかありません。

そこで、私たちはキムが掲げたエピフェノメナリズムと消去主義という選択肢を避けて通る道を探ってみる事を試みようと思います。

もし、機能的還元に至る論証のどこかに、あるいは機能的還元の立場そのものに隙があるとすれば、そこを徹底的に攻めることで、キムの選択肢以外の全く新しい道を見つけ出せる事が出来るかもしれないのです。
以下では、ほんの一例でしかありませんが、いくつか提出されてきたキムに対する批判の中で、代表的なものを二つ紹介したいと思います。