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7.ピフェノメナリズムとスーパーヴィーニエンス

ある出来事の物理的性質が他の出来事と因果関係に関与したとして、それと共存していただけの心的性質もまた、その出来事に関して因果的な力を発揮したと言えるでしょうか。
つまり、物事の原因結果は別の出来事の原因結果に関係している場合、その時の心の動きは、物事の原因結果のように因果的に関係していると言えるのかという事です。

そして、その心的性質は、因果関係が生じたとき、たまたまそこにあっただけの事ではないのか。

以上のような考え方をエピフェノメナリズムと言います。

幾ら心的な性質や出来事の存在を主張しても、実質的に因果関係を担っているのが物理的な関係である以上、エピフェノメナリズムへの不安は付き纏います。

後のディヴィドソンの考察でも、性質の間に成り立ち、一方の性質における違いが、他方の性質の違いに左右されるという「スーパーヴィーニエンス」という関係を導入しようとしたのは、心的なものの因果的効力に対する疑念を晴らし、エピフェノメナリズムを回避しようとした目的があったとみられます。

つまり、ディヴィドソンも自身の先述した例としての①②③の原則にはエピフェノメナリズムが入り込む余地があったと考えていたのは間違いありません。

次の章で取り上げますが、スーパーヴィーニエンスには、特定の心的性質を、それを実現する物理的性質の「上に乗せる」ことにより、それらを同じものにすることなしに、つまり、物理的なものに「還元」することなしに関連付けると同時に、心的な出来事が何故因果的な作用もたらす事ができるのかを明らかにする役割が期待できます。
つまり、心の出来事にも因果関係が存在するのは当然として、それを物理的なものにその心の中での出来事の因果関係を明らかにするのにスーパーヴィーニエンスが有効ではないかという事です。

もしスーパーヴィーニエンスが本当のところ心の出来事を明らかにする役割を果たす事ができることになれば、そのことは、心独自の因果的自立性と物理主義とを両立させる便利な方法と言えます。