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2.ディヴィドソンの心的出来事とスーパーヴィーニエンス

ディヴィドソンが初めてスーパーヴィーニエンスに言及したのは、「心的出来事(Mental Events)」という論文でした。
この論文の中の一節は心的なものと物理的なものとのスーパーヴィーニエンス関係を明確に述べたものとして、しばしば引用されている箇所をここで引用します。

私が述べている立場は心理―物理法則が存在する事を否定してはいるけれども、それは心的特徴がある意味で物理的特徴に依存またはスーパーヴィーンするという見解と矛盾しない。
そのようなスーパーヴィーニエンスは次のようなことを意味とていると看做されるだろう。
すなわち、二つの出来事が、あらゆる物理的な側面で似ていながらある心的側面において異なっているということはありえない、または、ある対象はある物理的側面を変えずしてある心的側面を変える事はありえないということである(ディヴィドソン「心的出来事」)。

先に見たようにティヴィドソンは心的なものに厳格な法則は成り立たないという立場をとっています。
物理的なものは当然、物理的な因果法則に従っています。
そうすると、心的なものと物理的なものとが全く無関係になってしまうのではないかという声があります。

それに対してディヴィドソンが用意した答えは、出来事の心的特徴と物理的特徴は無関係ではない、というものです。